
毎日車で弁当を食べていた俺。同僚の前で恋人の手料理を隠し続けた理由
カップル
「冷凍を詰めただけ、なんだね」。洗い物を続ける彼女の背中にそう聞かれても、俺は理由の半分も話せませんでした。話せば言い訳になる気がしたのです。
弁当箱のふたを戻してから、2つ隣の席に目をやりました。彼女の机の上には、もうふたの閉まったお弁当。画面に向かう横顔を見て、さっき自分が口にした言葉がどう聞こえたのか、ようやく考え始めていました。
休憩のたびに車へ向かっていた理由
職場では付き合っていることを言わないでほしい。そう頼んできたのは、彼女のほうでした。前の部署で、ささいな噂が広まって居づらくなったことがあったそうです。俺はその約束を守ると決めていました。
一緒に暮らし始めて彼女が弁当を作ってくれるようになってから、休憩時間は駐車場の車の中で食べるようにしていました。同じ中身の弁当が2つ、同じフロアで開くのは危ないと思ったからです。彼女には「外で済ませてる」とだけ伝えていました。
先輩の冗談と、とっさに出た言葉
きっかけは1週間前。給湯室のレンジでおかずを温めていると、後ろから先輩に笑いながら言われました。
「お前の弁当の卵焼き、あの人のとそっくりだな」
冗談だと分かっていても、それ以来、弁当の話題になるたびに身構えるようになっていました。
あの日は雨で、車まで走るのをためらっているうちに、先輩が椅子を引いてきたのです。弁当を作ってもらわないのかと聞かれ、ここで曖昧に答えればまた卵焼きの話に戻るかもしれないと考えました。とっさに出たのが、この言葉です。
「彼女の手料理なんて食べたことないです」
ふたを開けられたときも、頭にあったのは話を早く終わらせることだけ。「冷凍を詰めただけです」と答えながら、彼女が卵焼きを何度も巻き直している姿を思い浮かべていました。守っていたのは約束のはずなのに、口から出たのは彼女の手間を消す言葉ばかりでした。
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言えなかった「あれしか」の中身


























