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彼女の支出を「その他」にしたのは、口を出したくなかったから。伝えそびれた僕の事情

コラム

夕食のとき、彼女がスマホの画面をこちらに向けてきました。映っていたのは、僕が管理している家計アプリです。「その他」という欄を指でなぞる彼女を見て、いつか聞かれると思っていた質問が、とうとう来たのだと分かりました。

自分にだけ厳しくつけた家計簿

同棲を始めるとき、家計アプリを用意したのは僕でした。自分の支出は、一円単位で細かく分けました。食費も、本も、ゲームも、すべて名前のついた欄に振り分けて、毎月見直していたのです。自分の浪費を抑えたかったからでした。

けれど彼女のぶんだけは、あえてひとつにまとめました。彼女が何を買ったのか、僕がいちいち確かめたくなかったのです。「その他」という欄は、僕にとって、そこには手を出さないという印のつもりでした。

お金で揉め続けた家の記憶

僕がそうしたのには、理由がありました。実家では、母が父の使ったお金を一円残らず記録し、何に使ったのかを問い詰めていたのです。食卓ではいつもお金の話が続き、家のなかには張りつめた空気が流れていました。

子供ながらに、お金を数えられることがどれほど人を追い詰めるかを、僕は感じていたのだと思います。だからこそ、好きな人の財布の中身だけは、決して数えたくなかった。彼女の自由を守っているつもりでいたのです。

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