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記念日の花束を花屋に置いて、手ぶらで彼女のもとへ帰った僕が抱えていた本当の事情

コラム

彼女が用意してくれた記念日の料理を前にしても、僕は本当のことを切り出せませんでした。誇れない自分を見せたくない。その思いが、結局いちばん大切にしたい人を遠ざけていたのです。

花屋のカウンターに、白とピンクの花で束ねてもらった花束が残されていました。記念日に渡すつもりで、仕事帰りに選んだものです。それなのに僕は、その花束を受け取らないまま、店を出てしまいました。

選んだ花束

3年付き合った記念日に何を贈ろうか、僕は数日前から考えていました。派手なものは彼女の趣味ではないけれど、花ならきっと喜んでくれる。そう思って、仕事帰りに花屋へ寄ったのです。白とピンクを中心に束ねてもらい、ラッピングを待つあいだ、かばんの中でスマホが振動しました。会社からのメッセージです。

長く担当してきた企画が、僕の力不足を理由に別の人へ引き継がれることになった、という知らせでした。花束を受け取る順番が来ても、僕はスマホに並んだ文字を何度も読み返していました。

さっきまで思い描いていた記念日の景色が、急に遠ざかっていくようでした。

渡せなかった理由

その花束には、ただの記念日以上の意味を込めるつもりでした。来年あたり、一緒に暮らそうと切り出そう。そんなふうに考えながら選んだ花だったのです。

けれど、自分の仕事がうまくいっていないと突きつけられた直後に、未来の話を持ちかける気にはなれませんでした。誇れない自分が花束を渡しても、彼女に見栄を張っているようで、かえって嘘くさく思えてしまったのです。

ラッピングされた花束を前にして、僕は店員さんに「すみません、今日はやめておきます」とだけ伝えました。束ねてもらった花を置いて店を出る後ろめたさよりも、中途半端な気持ちのまま彼女に渡したくないという思いのほうが、勝ってしまいました。

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手ぶらの帰り道
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