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「私ドリンクだけでいいから、一口もらうね」毎回そう言う友人が、店員の前で初めて黙った

コラム

「私もいつも、ああいう気持ちだったよ」。帰宅後、初めてそう打ちました。

友人から返った「言ってくれればよかったのに」を見て、私はこれまでのやりとりを思い返します。

いつもの一言

友人とは月に1度、気になるカフェを巡るのが続いています。予約を入れるのはいつも私で、友人はメニューの写真だけ確認して「私ドリンクだけでいいから、一口もらうね」と送ってきます。最初は気にしていませんでした。でもいつからか、自分の注文をフォークで切り分けやすいものから選ぶようになっていたのです。タルト、プリン、フルーツサンド。おいしそうかどうかより、半分に取り分けやすいかどうかが、私の注文基準になっていました。

注文カウンター

その日のカフェは、予約の取りにくい人気店でした。席に通される前に、カウンターで1人ずつ注文を済ませる形式です。私がフルーツタルトとコーヒーを頼んだあと、友人はメニューを開いて「カフェラテを1つ」とだけ告げました。「フードは頼まないの?」と聞くと、友人はカウンター越しに「いいよ、一口もらうから」と笑いました。

その声は私に向けたものでしたが、隣にいた店員にも届いていました。「恐れ入りますが、お1人様1品フードメニューをお選びいただいております」。店員の声は穏やかなまま、けれど揺らぎませんでした。「あ、そうなんですか」。友人はメニューを開き直し、「じゃあ1番小さいのでいいです」と、いちばん下の段にある焼き菓子を指差しました。席につくまで、友人は一言も口を開きませんでした。

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