
人事部で最終面接を長く担当してきた私、娘から聞いた婚約者の名前に覚えがあった
コラム
娘の婚約者が食卓で話した、学生のころに断った内定のこと。その会社の最終面接で向かいに座っていたのが私だと、彼はまだ知りません。私も、知らせないと決めていました。
娘から婚約者の名前を聞いたとき、その響きに覚えがありました。人事部で長く最終面接を担当してきた仕事柄、忘れられない名前がいくつかあります。
8年前に合格を出した学生
8年前、その名前の学生を最終面接で合格にしました。何を聞き、どう答えたのか、細かなやりとりはもう曖昧です。ただ、答えるたびにこちらの目をまっすぐ見ていた学生だったことだけは、はっきり残っています。
数日後、担当者から辞退の知らせが届きました。惜しいとは思いました。それでも、あの学生ならどこへ行ってもやっていける。そう思えたことで、自分の中ではきちんと区切りがついていたのです。
玄関で決めた、初対面のふり
挨拶の日、玄関に立った彼は、深く頭を下げて言いました。
「はじめまして。本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
彼は覚えていない。そう分かって、少しほっとした自分がいました。私が名乗れば、彼は内定を断った人として、あらためて頭を下げることになる。
「いえ。どうぞ、お上がりください」
面接の日と同じ敬語のまま、初対面として通すと決めました。
食卓で、妻が聞きました。
「どんなお仕事をされてるの?」
彼は設計の仕事を、妻にも分かる言葉で説明していきます。
「学生のころ、名前の知れた会社から内定をいただいたんですが、いろいろ考えて、今の会社に決めました」
その会社の最終面接で向かいに座っていたのが私だと、食卓で知っているのは私だけでした。あの日と同じまっすぐな話し方で、彼は今、私の家族に仕事の話をしている。どんな現場を任されているのか、今の会社を選んでよかったか。聞きたいことはいくらでもある。けれど私が何か聞いて、当時の面接を思い出されるのは嫌でした。
「そうですか」
それだけ返して、湯のみを口に運びました。
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電話で話しきれなかった続き





























