
「もう少しだけ、誰にも言わないで」と頼んだ彼→友人の前で、私を「ただの知り合い」と否定した
カップル
ただの知り合い。彼のそのひとことが、友人たちの笑い声に紛れて消えました。席を立った私を、彼は廊下で追いかけてきます。差し出した画面を見て、私の見方は少しだけ動きました。
友人宅のテーブルには、取り分けの終わった紙皿が並んでいました。その集まりに、私と彼は少し時間をずらして着きました。付き合っていることを、まだ周りには内緒にしていたからです。それでも、同じ部屋にいられるだけで十分だと思っていたのです。
紙皿にのった、ふたりだけの気遣い
料理が回ってくると、彼は私の紙皿にいちばん大きい唐揚げをのせてくれました。周りに気づかれない手つきでした。付き合いはじめたころ、彼には「もう少しだけ、誰にも言わないでほしい」と頼まれていました。
理由は聞かないままでしたが、急かすことでもないと感じていました。その小さな気遣いだけで、隠していることのさみしさは、ほとんど気にならなくなっていました。
「もしかして、ふたり付き合ってる?」
取り皿を交換していたとき、向かいの友人がふと顔を上げました。
「もしかして、ふたり付き合ってる?」
明るい声でした。場の全員がこちらを見た気がしました。彼は短く笑って、「いや、ただの知り合いだよ」と答えました。話はすぐ別の方へ流れていきました。
私は取り皿を持ったまま、飲み物を取ってくると言って席を立ちました。台所の蛇口の水音だけが、やけにはっきり聞こえました。
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「知り合い」のひとことが置いていったもの
























