
奢られて当然女 vs 全員キャッシュレス。現金しか使えない店で起きた悲劇
コラム
会計で起きた小さな事件
食事を終え、会計の時間になりました。ひとり5,000円ほど、4人で約2万円。私たちがそれぞれ財布を開いたとき、顔を見合わせました。私の財布には小銭が数百円。他の2人も同様でした。
「ごめん、現金持ってきてなくて……」
「俺も完全に忘れてた……」
そのとき、美咲がいつものように言いかけました。
「あ、私も現金なく――」
しかし、その言葉は途中で止まりました。私たち3人の視線が、静かに美咲に集まっていたからです。 「美咲、お願いできる? あとで絶対振り込むから」
いつも美咲が言っていたセリフを、今度は私たちが言う番でした。
美咲は観念したように財布を開きました。いつも「持ってない」と言っていたのは何だったのか。私たちは何も言いませんでしたが、美咲は気まずそうに全員分の会計を済ませました。
そして…
店を出た瞬間、私たちは約束通りすぐにスマホを取り出しました。
「はい、振り込んだよ」
「私も送ったよ」
1分も経たないうちに、全員が自分の分を送金し終えていました。美咲はしばらくスマホの画面を見つめていました。そして、ぽつりと呟いたのです。
「私、今まで何回『あとで返す』って言って、返してなかったんだろう」
誰も何も言いませんでした。美咲は続けました。
「立て替えてもらうのが当たり前になってた。みんな、嫌だったよね。ごめん」
その言葉を聞いて、私たちの中で何かがほどけた気がしました。長い間言えなかったモヤモヤが、ようやく消化されたような感覚でした。
それからの食事会では、美咲は誰よりも先に財布を出すようになりました。今も私たちは月に一度集まっています。あの日のことを蒸し返すことはありません。ただ、少しだけ風通しがよくなった関係で、これからも友情を大切にしていきたいと思っています。
(20代女性・販売職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























