
返した本に半券を挟んだまま、最後まで読めなかった俺の本心
コラム
最後まで読んだと言ったのは、嘘でした。あの展覧会の帰りから、俺はその先のページをめくれずにいたのです。読み終えてしまえば、本当に終わってしまう気がして。
カフェのテーブルに文庫本を置いてから、俺は一度かけたカップから指を離しました。返すと決めたのは自分なのに、店に入ってから何度も入口の方を見ていました。彼女が本を開くのは、きっと俺が帰ったあとだろうと思っていました。
別れを切り出したのは、俺のほうだった
付き合いの終わりに先に気づいたふりをしたのは、俺でした。彼女が将来の話をするたびに、俺だけが同じ熱を持てずにいたのです。それを正直に伝えればよかったのに、連絡を減らして距離を作ろうとしました。最後はこちらから別れを切り出して、借りていた本だけが二人の間に残りました。返すと決めて、あのカフェを指定したのは俺です。
最後のページを、開けなかった
本を返す前に、もう一度だけ読み進めようとしました。けれど、最後に二人で出かけた展覧会が描かれているくだりまで来て、俺はそこで本を閉じました。あの展覧会の半券は、上着のポケットに入れたままでした。読みかけのページにそれをはさんだのは、何かの区切りをつけたかったからかもしれません。結末まで読んでしまえば、すべてが終わってしまう気がしたのです。
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読んだと、嘘をついた
























