
「プレゼントとか、別にいらないからね」その一言で、俺はポケットの箱を出せなかった
コラム
喜ばせるつもりで用意したプレゼントが、彼女の一言を境に急に重たく感じました。顔を見て渡せなかった俺が、それでも諦めきれずに選んだのが、あの方法でした。
ポケットの中で角張った箱の感触を確かめながら、俺は彼女が作った料理に箸をのばしていました。
箱は最初からポケットの中にあった
二年付き合った記念日に渡すつもりで、俺は腕時計を用意していました。前に二人で入った店で、彼女が「可愛いけど、私には高すぎるよ」と棚に戻したものです。その横顔がずっと心に残っていて、いつか喜ばせたいと思っていました。煮込みの匂いがする食卓で、俺は箱を出すきっかけを探りながら、彼女の好きな話に相づちを打っていました。
渡すきっかけは、彼女の一言で消えた
食事が半分ほど進んだ頃、彼女のほうから「プレゼントとか、別にいらないからね」と言いました。あの店で時計を戻した時の横顔が重なって、これを出したら彼女に気をつかわせるだけかもしれないと思いました。喜ばせるはずの箱が、急に重たくなりました。
結局俺は最後まで出せないまま、「今日はありがとう。もう帰るね」と席を立ちました。早く帰ったのは、長くいると箱のことを口に出してしまいそうだったからです。
次のページへ
渡せなかった箱を、彼女の家のポストに入れに行った
























