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会計を申し出た俺に、店員が告げた「お会計はもう頂いております」

コラム

気の利く男を演じているつもりだった俺は、会計の場面で、自分が相手を何も見ていなかったと思い知らされます。

彼女が席を立ったあとも、店員の一言が耳から離れませんでした。店に着く前、俺はスマホのメモに並べた鉄板の質問を、最後にもう1度読み返していました。

会話は、教わった通りに始めたはずだった

文面のやりとりだけでは距離が縮まらないと、俺は先輩から何度も言われていました。だから会って早い段階で相手の恋愛の話に触れ、主導権を握るつもりでした。席に着いてすぐ「最後に彼氏いたのいつ?」と切り出したのも、その作戦の1つです。彼女が言葉を濁したので、場を持たせようと「そんなに前なんだ」と受けて笑いました。手応えは悪くないと、そのときの俺は思っていました。

褒めたつもりの言葉が、どれも上からだった

料理が来たとき「写真より顔タイプだったわ」と伝えたのは、素直な感想でした。よく食べる彼女に「意外とよく食べるね」と言ったのも、親しみのつもりでした。貯金や老後の話を振ったのは、将来を任せられる相手か確かめたかったからです。相手を値踏みしているということに、あのときの俺は気づいていませんでした。返事が短くなっていく彼女に、俺はメニューの端を意味もなく折り曲げていました。緊張がほぐれてきたのだろうと、都合よく考えていました。

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