
今なにしてるのと打てなかった俺は、代わりに絵柄を重ねて押していました
コラム
やめてほしいと言われて、俺は素直に押すのをやめました。ただ、押さなくなってから、聞けないまま終わる話が1つずつ増えていきます。そのぶん、こちらから切り出す言葉を探すようになりました。
彼女の名前の下に絵柄を1つ足して、俺はもう1つ足す指を止められませんでした。
今どこにいるのと打てなかった
付き合って1年半、彼女が家を出る前に届くのは「またあとでね」だけです。相手が姉なのか友人なのかも、帰る見込みも書いてありません。悪気がないのはわかっていました。それでも、そこから先の時間に自分の入る場所がないように思えて、画面を開いたままにしていました。
文字にすると詮索になる
今なにしてるのと文字で書けば、それは行き先を確かめているのと変わりません。絵柄なら返事は要らないし、押した分だけやりとりが画面の上のほうへ動きます。彼女が手を空けたとき、いちばん上に俺の名前があればいい。1つでは足りない気がして、続けて押していました。「今どこにいるか、聞いてもいい?」と文字で送ったのはあの回きりで、既読の印だけがついたまま動きませんでした。
次のページへ
押すのをやめた






















