邪魔だと思って後ろの人を押した俺が、ホームで妻に背を向けられるまで

コラム

どいてくれれば早い。そう決めつけて背中に体重をかけた俺は、改札のほうへ歩き出した妻の後ろを、名前を呼びながらついていくことになります。

ドアが閉まる合図が鳴り終わる前に、俺はつり革と手すりを両手でつかみました。

妻の前に立つと決めていた

妻と電車で出かけるのは久しぶりでした。以前この路線で妻が足を踏まれたとき、俺は隣で吊り広告を見ていただけです。だから乗り込むなり、窓側の隅へ妻を入れました。

「大丈夫か、こっちに寄って」

妻がうなずいたので、腕をさらに広げました。

「壁になってるから平気だ」

広げた先に誰の肩があるかは、確かめていません。

どけばいいと思っていた

駅ごとに人が増え、妻の前が狭くなります。隣の女性が半歩ずれたので、俺はそのぶん体を寄せました。空いた場所は妻のために使うものだと思っていました。

「すみません、少し詰めていただけますか」

肩の後ろから声が届きました。詰めるも何も、詰めているのはこっちだ。そう思って、肩越しに目を向けてから前に向き直り、体重をかけ直しました。それ以上押す必要はなかったのに、押しました。どいてくれれば早い、と決めつけていたからです。

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