「化粧、濃くない?」と言った彼の前に、すっぴんで立ってみた私の話

コラム

定食屋で「これで満足?」と聞いた私に、彼は箸を置いてから別の言葉を返しました。あの日のカフェでの一言とは違う、聞きたくなかった言葉でした。

玄関の鏡に映っていたのは、眉も引いていない、いつもよりみすぼらしく見える自分の顔でした。ドアの向こうで、迎えに来た彼がインターホンを鳴らしています。先週の彼の一言に、私はこの顔で答えるつもりでした。

「化粧、濃くない?」の一言

付き合って1年になる彼と、いつものカフェにいたときのことです。届いたラテに口をつける前に、彼が私の顔をじっと見て言いました。

「化粧、濃くない?」

「濃いのが好きなの」

そう返すと、彼は「そっか」とだけ言って、カップに視線を落としました。残りのラテを飲み干すまで、ストローの先ばかり見ていました。

私のメイクは、私のためのもの

帰ってから、洗面台の前で鏡を見ました。奥二重の目、薄い眉、頬の赤み。自分の顔を好きだと思えたことは、一度もありません。ポーチは年々重くなり、店のガラスに映るたびにまぶたの線を指で確かめる癖までついています。

仕上げた後の顔を濃いと言われるのは、努力ごと否定された気がしました。彼のためにしているわけじゃない。それなら、彼が望むらしい顔で出かけてやろうと決めました。

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