「うるせえな」レストランで子ども連れに舌打ちした男性→睨んだ私が、隣の席の女の子に差し出したもの

コラム

女の子が呼んだ名前

「ぴょんちゃん」

はっきりそう言って、女の子は両手を伸ばしてきました。マスコットを渡すと、胸に抱えて泣き顔のまま笑い出しました。母親はその名前を聞くと窓の外へ顔を向け、しばらくそのままでした。

向かいの席の年配の女性が、こちらを見て目を細めました。

「かわいいうさぎさんね」

女の子が得意げにうさぎを掲げると、近くの席から小さな笑い声がこぼれました。食器の触れ合う音が戻り、店員さんの足取りまで軽くなったように見えました。

男性は一度周りを見回すと、半分残った皿をそのままに伝票をつかみました。誰とも目を合わせないまま会計を済ませ、足早に店を出ていきました。

ドアが閉まると、母親がこちらへ向き直りました。

「本当に、ありがとうございました」

そして...

私が先に席を立つとき、女の子はうさぎを抱いたまま、ポテトを1本ずつ口に運んでいました。母親が慌ててうさぎを返そうとしたので、私は小声で伝えました。

「よかったら、その子もらってください」

レジの前で振り返ると、何度も頭を下げていた母親の隣で、女の子がうさぎの手を持って小さく振っていました。

初めて見るはずのうさぎを、あの子はどうして迷わず名前で呼んだのでしょう。その名前を聞いたあと、窓の外を見ていた母親の横顔が、ずっと気になっています。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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