
謝る一言を何度も消した俺が、3000円と「ケーキでも買って」に逃げた理由
ライフスタイル
現場の休憩所で送金アプリを開き、3000円と入力しました。宛先は、ゆうべ口をきかないまま別の部屋で眠った妻です。メッセージ欄には一度「昨日はごめん」と打ちました。
送信ボタンは押せませんでした。
俺だけが悪いことになる気がしていた
結婚して3年、俺は妻に謝るのが苦手でした。今回も、妻が実家へ行く日を母親との電話で先に決めていたことには腹が立っていました。
俺だって予定がある。
そう思っていたところへ、同僚からゴルフに誘われ、その日を入れました。妻から、「いつも私の予定は後回しだよね」と言われ、「そっちだって勝手に決めてただろ」と返しました。ゴルフを先に入れたことと、あの言い方は俺が悪かった。それは分かっていました。
でも「ごめん」と言えば、妻が先に予定を決めたことまで俺が受け入れたことになる気がしたのです。自分が悪かったところを謝ってから、自分が嫌だったことを言えばいい。今ならそれだけの話だと分かります。そのときの俺には、それができませんでした。
タルトの話だけは覚えていた
言い合いになる少し前、妻は食卓で言っていました。「駅前のケーキ屋さんの栗のタルト、今週までなんだって」俺はゴルフの連絡を見ながら、「へえ」としか返しませんでした。でも聞いていました。去年も同じタルトを買い逃して、妻が残念がっていたことも覚えていました。
翌日の休憩中、俺が帰るころには店が閉まっていることを思い出し、送金アプリに3000円を入れました。「昨日はごめん。タルト、今週までって言ってたよね」そこまで打って、全部消しました。謝るついでにケーキで機嫌を取るように見える気がしたからです。代わりに送ったのが、「ケーキでも買って」でした。今考えれば、謝罪だけ消してお金を送ったほうが、よほど機嫌取りに見えます。妻から、「お金じゃなくて、ごめんが聞きたかった」と返ってきて、初めてそれに気づきました。
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