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    娘の新居の地図ばかり見ていた私が、あの電話で話しそびれたこと

    ライフスタイル

    「母さん、カーテンのフックってどこ?」息子の声で、娘との電話を切ってしまいました。娘にだけくり返してきた言葉には、娘の知らない始まりがありました。

    スマホの地図に娘の新しい住所を打ち込むのは、もう何度目か分かりませんでした。駅から部屋までの道も、近くのスーパーの場所も、見なくても思い浮かぶほど。それなのに、娘本人にはそのことを一度も話していませんでした。

    私が娘にだけ使ってきた言葉

    春から、娘は転勤で県外へ、息子は大学進学で一人暮らしを始めることになりました。荷造りの手伝いは、自然と息子のほうに偏りました。鍵や財布をよくなくす子で、放っておけなかったのです。

    台所で息子の段ボールに中身を書き込んでいたとき、娘に声をかけられました。

    「私も来週引っ越しなんだけど」

    「あんたは心配いらない」

    ペンを動かしたまま返したこの言葉を、娘が小さい頃から使ってきました。時間割も願書も一人で揃え、困ったことは片付けてから報告してくる子。その姿を見るたびに、同じ言葉をかけてきたのです。

    私の母に言われ続けた「見てられない」

    私自身は、母から「あんたは見てられない」と言われて育ちました。宿題は横から直され、進学先もアルバイト先も、決める前に母の意見が入りました。心配されるたび、信用されていないのだと感じていたものです。

    娘が生まれたとき、同じことはしないと決めました。信じていると伝えるつもりで口出しをこらえ、代わりにあの言葉を選んできました。

    引っ越し当日は、息子の部屋にいました。家族のグループチャットには、カーテンを測る息子や炊飯器を抱える息子の写真を送りました。娘からの「着いたよ」には、「よかった」と返しただけでした。

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