
娘に「好きに生きろ」と言った日から、俺の中で何かが止まったままだった
コラム
娘が来た日
8年後、予想していた通り会社は傾きました。息子は懸命にやっていますが、限界が近い。そんなある日、事務所のドアが開きました。立っていたのは娘でした。
「なんで来た」。顔を上げられませんでした。「帳簿、見せて」。その声は8年前と同じ、まっすぐな声でした。指先が冷たくなるのを感じながら、帳簿を差し出しました。
そして...
手が震えていたのは、経営の数字を見られることが恥ずかしかったからじゃない。あの子が来てくれたことが、ただありがたかったのです。
本当は「継がせたくなかった」んじゃない。継がせたかったのに、継がせられる会社じゃなかった。その一言が8年間ずっと喉の奥に詰まったままです。娘は何も聞かずに帳簿を開きました。俺はその横顔を見ながら、ようやく止まっていた時計が動き出したような気がしていました。言えなかった言葉は、まだ言えていません。
(50代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























