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夫が隣人に「妻は体の調子がよくないもので」と話した夜、私は初めて声を出して泣いた

コラム

 私の病気のことを、夫は誰にも話さなかった。「説明するかどうかは、あなたが決めることだから」と言って。隣の奥さんたちが噂しているのは知っていた。それでも変わらない日々が続いた、ある夜に。

誰にも言わない、と決めていた

難病の診断が出たのは、このマンションに越してきてしばらく後のことです。長時間立っていることが難しくなり、台所に立てない日が増えた。夫は何も言わずに料理を引き受けてくれました。「俺のほうが料理うまいし」と笑いながら。

 近所への説明は、私が決めるまで待ってくれた。「隣の奥さんたちが噂してるみたいよ」と一度だけ伝えたとき、夫は「ほっとけ」と短く返しました。その一言が、妙に胸に沁みたことを覚えています。

「話した」と言った夜

 ある日曜の夜、買い物袋を提げて帰ってきた夫が、荷物を置くなり「今日、隣の人に少し話したよ」と言いました。エレベーターで乗り合わせたのだと。「いつもお料理されてるんですね」と声をかけられたから、と。

 「なんて言ったの」と聞くと、夫は少し照れたように答えました。「妻は体の調子がよくないもので。美味しいものを食べさせてあげたくてって」。それだけ言って、台所に立ちました。私はしばらく、何も言えないでいました。

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