
「何もないよ」と笑った朝、俺はもう転勤の辞令を受け取っていた
コラム
「何かやらかした?」に「逆」と返した夜
木曜、彼女からメッセージが届きました。「最近やたら優しいけど、何かやらかした?」画面を見つめたまま、入力欄にカーソルだけが点滅していました。
本当のことを書く勇気はなく、嘘もつきたくなくて、結局「逆」とだけ送りました。「また今度話すよ」と続けて、それから彼女のメッセージは開かないようにしました。彼女のせいじゃない。俺がやらかしたわけでもない。
ただ、俺が君のそばを離れるんだ。書ければよかった一文が、どうしても文字にできなかった夜でした。
そして...
金曜の夜、ようやく切り出しました。「来月から、しばらく東京を離れることになった」彼女は一瞬黙って、「……仕事?」と聞き返しました。「うん。地方勤務」
短く答えた俺の手を、彼女は黙って握ってくれました。「ありがとう」と返した彼女の声は、責めるでも泣くでもなく、穏やかでした。何もできなかった一週間の優しさが、彼女にはちゃんと届いていたのかもしれません。
これから始まる長い距離を、二人で乗り越えていくために、先に渡してしまった一週間ぶんの優しさを、これから時間をかけて形にしていこうと思っています。
(30代男性・営業職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)




























