
彼の新しい財布に入っていたのは、私の写真ではなく一枚の古いレシートだった
コラム
捨てられない、という答え
「そのレシートのほうが大事なの?」。彼はレシートを指でなぞりながら、ぽつりと言いました。「うまく言えないんだけど、捨てられないんだ」。捨てられない、という言葉だけが、やけに耳に残りました。私との写真は当たり前のように外せるのに、その紙切れだけはどうしても手放せない。そこにどんな思い出があるのか、私はまだ何も知らないのだと気づきました。
そして...
本当なら、その場でもっと問いただしたかったのかもしれません。でも、レシートを見つめる彼の横顔が、思いのほか優しかったのです。きっと、私の知らない大切な何かが、あの紙切れには詰まっているのでしょう。そう思えたとき、勝手に傷ついていた自分が、少し恥ずかしくなりました。今度は寂しさをぶつけるのではなく、「そのレシート、どんな思い出なの」と笑って聞いてみようと思います。私の写真とその思い出が並ぶ日も、そう遠くない気がしました。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























