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「それ、見なくていい」と保証書を隠した僕。彼女を傷つけてまで隠したかった、情けない理由

コラム

いらないと言ったのは僕なのに、自分のためだけに時計を買っていました。彼女を傷つけているとわかっていても、あの一枚だけは見せられなかったのです。

箱から滑り落ちた保証書を、僕はとっさに手のひらで覆い隠しました。彼女が不思議そうにこちらを見ているのは、見なくてもわかりました。自分の誕生日を二人で過ごす、何でもないはずの時間でした。それなのに僕は、その一枚だけは、どうしても彼女に見せたくなかったのです。

とっさに隠した一枚

その日は僕の誕生日で、彼女が料理とプレゼントを持って部屋に来てくれました。テーブルには、前から欲しかった腕時計が置いてありました。何年も迷った末に、ようやく自分への贈り物として買ったものです。

彼女が箱を手に取ったとき、中から保証書が滑り落ちました。彼女が拾おうとするより早く、僕は「それ、見なくていい」と口にして、その紙を折りたたんで引き出しの奥にしまいました。彼女を傷つけたいわけでも、やましいことがあるわけでもありません。

ただ、その一枚に書かれた日付を、見られたくなかっただけなのです。

祝われることが、苦手だった

少し前、彼女に誕生日に何が欲しいか聞かれたとき、僕は「誕生日とか、別にいいよ。欲しいものもないし」と答えていました。本当は、ずっとあの時計が欲しかったのに。

子どもの頃、僕の家では誕生日を祝う習慣がほとんどありませんでした。両親は仕事で忙しく、ケーキもプレゼントもない年が当たり前でした。だからか、誰かに祝ってもらうことが、いまでもどこか照れくさく、申し訳なくも感じてしまうのです。

欲しいものはないと言いながら、自分でこっそり時計を買う。保証書の日付を見れば、その小さな嘘がすぐにばれてしまう。それが、僕には決まりが悪かったのです。

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