
表札から彼女の名前を消した僕。本当は、別の表札を職人に頼んでいた
コラム
工房の職人さんから受け取った木の表札を、僕は彼女に見つからないよう、そっとかばんの奥へしまいました。それは、新しい家に飾るために、ひそかに頼んでおいた特別な一枚です。かばんの奥にしまったこの表札のことを、僕はまだ彼女に打ち明けられずにいました。
内緒にしていた計画
彼女との同棲を決めたとき、僕にはひそかに考えていたことがありました。一緒に暮らすこの家で、彼女にプロポーズをしようと思っていたのです。表札を選ぶとき、彼女は「二人の名前を並べた表札にしようね」と言いました。僕は「うん、そうしよう」と答えました。
でも本当は、その先のことまで考えていたのです。二人の名前を並べるなら、いつか同じ名字になったときの表札のほうがいい。そう思って、僕は職人さんに、彼女の名前を入れた特別な表札を一から作ってもらう手配を、こっそり進めていました。
言えなかった一言
完成した表札の箱を開けた彼女が、その場で黙り込んだのが分かりました。そこにあるのは、引っ越しの手続きに間に合わせるために頼んだ、僕の名前だけの表札です。彼女は確かめるように聞いてきました。「これ、あなたの名前しかないよね。私の名前は?」。本当のことを言えば、すべてのサプライズが台無しになる。そう思った僕は、目を合わせないまま「今はこれでいいから」とだけ返しました。彼女は声を落として「私の名前は、いらないってこと?」と言いました。違う、そうじゃないんだ。そう叫びたいのをこらえて、僕は「そうじゃない。もう少しだけ待ってほしいんだ」と言うしかありませんでした。
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サプライズより大切なもの

























