
好きな人にそっと置いた差し入れ。お礼を言われていたのは、私ではなく先輩でした
コラム
名前を書かなかったのは、私です
違う、それは私が置いたんです。そう言えたら、どれだけよかったでしょう。けれど名前を書かなかったのは私自身です。今さら手を挙げて主張するのも浅ましい気がして、私は手元の書類に視線を落としました。
本当に苦しかったのは、お礼の相手を間違えられたことではありません。「こういう気遣いがさらっとできる人って、いいですよね」と彼が口にしたとき、その視界に私がまったく入っていなかったことです。
毎日彼を目で追い、好きな飲み物まで覚えていた私は、彼にとって気づかれてすらいない存在だったのだと感じました。
そして...
それでも、私はあの差し入れを後悔していません。誰のためでもなく、疲れている彼に少しでも元気が出たらと思って選んだ一本です。お礼が私に向かなかったとしても、彼がそれを飲んで、ほんの少しでも力が出たのなら、それでよかったのだと今は思えます。
ただ、これからは自分の気持ちを、こんなふうに名前のないかたちで隠すのはやめようと決めました。次に何かを手渡すときは、ちゃんと自分の名前で。たとえ届かなかったとしても、私の気持ちは私のものとして、まっすぐ差し出したいのです。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
























