
彼女の食材だけ別の袋に分けた俺が、口に出せなかった本当の理由
コラム
買い物カゴに、同じヨーグルトを二つ入れました。一つはいつもの分、もう一つは彼女が好きで、いつも自分で持ってくるものです。会計のときにレジ袋を分けてもらいながら、俺はそろそろ伝えようと決めていました。
二つずつ、カゴに入れたわけ
彼女とは付き合って二年ほどになります。休みのたびにどちらかの部屋で過ごすうち、彼女は自分の好きな食べ物を、わざわざ家から持ってくるようになっていました。俺の部屋には置いていないヨーグルトや豆乳を、紙袋に入れて。
冷蔵庫を勝手に使って悪い、と小さくなる彼女を見るたびに、俺は思っていたのです。そんなに気をつかわなくていいのに、と。
だからその日、同じものを二つずつ買いました。彼女の分だけをまとめた袋を渡して、「これ、全部君の。もうここに置いていきなよ」と言うつもりだったのです。そろそろ一緒に暮らさないか、という気持ちも込めて。
「それは分けておいて」と言った瞬間
ところが部屋に戻り、袋を台に並べていると、彼女がその小さな袋からヨーグルトを取り出し、冷蔵庫へしまおうとしたのです。とっさに俺は声を上げていました。
「それは分けておいて」せっかくまとめた袋が、いつもの場所にしまわれてしまう。そう思った瞬間、口が勝手に動いていたのです。
「どうして分けるの?」と、彼女は不思議そうに俺を見ました。今だ、ここで言えばいい。頭ではわかっているのに、俺はまた別のことを口にしていました。「いいから、そのままで」と、目を逸らしながら当たり障りのない言葉で、その場をやり過ごしてしまったのです。
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言えなかった、たった一言


























