
ずっと欲しかったバッグを、彼は「荷物」のひとことで店に預けた話
コラム
言えなかった食事の席で
席に着いてからも、私はうまく会話に入れませんでした。たかが言葉ひとつでこんなに引きずる自分が、少し子どもっぽいようにも思えたのです。料理の感想を言い合いながらも、心のどこかはまだクロークのカウンターに残ったままでした。
私の様子に気づいたのか、彼が「どうかした?」と聞いてきました。本当のことを言えば笑われる気がして、私は「ううん、なんでもない」と首を振りました。バッグのことなんて口に出すほどではない。そう自分に言い聞かせながら、グラスの水をひとくち飲みました。
そして...
帰り道、預かり札と引き換えに戻ってきたバッグを、私は両手で抱えて歩きました。彼に悪気がなかったことは、わかっています。
ただ、私にとって大切なものを、同じように大切だと思ってほしかっただけなのです。でも、言わなければ伝わらないことも、きっとあるのでしょう。次に同じ場面が来たら、今度は私から「このバッグ、すごく気に入ってるんだ」と話してみようと思います。
わかってもらえないと嘆くより、知ってもらう一歩を踏み出すほうが、私らしい気がしたからです。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























