
彼女の企画を、俺だけが別の資料に移した。誰にも言えなかった理由
コラム
彼女の企画だけを共有資料から外したのは、俺でした。誰かの案に埋もれさせたくなかったし、彼女の名前を残したまま役員に見せたいと思ったからです。
けれど、それを本人には説明できませんでした。職場では恋人であることを隠していたからです。彼女に「私の案だけ、別にしたんだね」と聞かれたとき、俺が返せたのは「これは、別で進めるから」という短い言葉だけでした。
名前が消えていく資料
会議後、チームの企画はひとつの共有資料にまとめられていきました。誰の案かよりも、チーム全体の提案として見せるための資料です。
その中で、いちばん筋がよかったのは彼女の企画でした。けれど、そのまま一緒にしてしまえば、彼女の名前は残りません。先輩の資料の一部として扱われてしまうのが目に見えていました。
だから俺は、彼女の企画だけを別ファイルに移しました。彼女の名前を残したまま、役員に見せるためです。
「これは、別で進めるから」
デスクに戻ると、彼女が来て「私の案だけ、別にしたんだね」と言いました。
本当なら、その場で理由を説明すればよかったのだと思います。けれど職場では、俺たちが付き合っていることをほとんど誰も知りません。
「君の名前を残したかった」と言えば、特別扱いに聞こえる気がしました。彼女のためだと言いながら、周りの目を気にしていたのは俺のほうです。
結局俺は、「これは、別で進めるから」とだけ返しました。彼女の表情が変わったのはわかりました。それでも、俺は説明を飲み込みました。
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役員の前で選んだファイル
























