おしゃれと恋で もっとかわいく - ハウコレ
SP用検索ボタン
メニューはこちら

「これで、よかったかな」と聞いてきた彼の前で、私はうまく笑えませんでした

コラム

名前のないお祝いのプレートより、もっと傷ついたものがありました。彼が言いかけて飲み込んだ言葉の続きを、私はいまも聞けずにいます。

連絡を減らしていたのに、祝ってもらえた席

彼と付き合って二年、二人で誕生日を祝うのは久しぶりでした。仕事の繁忙期が重なって、私からの連絡もずいぶん減っていました。返事が遅くなるたび、私はそのことに少しずつ後ろめたさを感じていました。それでも彼が予約してくれたこの席で向かい合えたことが嬉しくて、私はメニューを開く彼の横顔をうかがっていました。

けれど、その横顔は何か言いたげで、メニューを一度閉じて、また開いて、結局何も言わずにグラスに口をつけていました。今日はただの誕生日じゃないのかもしれない。そんな気が、ふと頭をよぎりました。

彼は一度、席を立ちました

食事の途中、彼は「ちょっと」とだけ言って入口のほうへ歩いていきました。店員と何か話しているようでしたが、背中越しでは聞き取れません。戻ってきた彼は、落ち着かない様子でおしぼりをいじっていました。やがて運ばれてきたのが、あのプレートです。隣の席には名前の入ったプレートが届いていて、私のものだけが、ただのお祝いの文字でした。彼は私の顔を見て、「これで、よかったかな」と聞きました。

HOT ITEM
  • X
  • Line