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娘の好物を作るのをやめた私。あの子の何気ない一言が忘れられなくて

コラム

冷凍庫の奥には、娘のために買った鶏もも肉が、封を切られないまま残っていました。あの子がまた帰ってきたくなる食卓にしたくて、慣れない料理もいくつも練習してきました。それでも、娘が大好きだった、いちばん出してあげたかった料理だけは、どうしても並べることができなかったのです。

娘の一言が、ずっと引っかかっていた

娘が1人暮らしを始めてから、帰ってくる日は必ずからあげを揚げてきました。生姜をきかせるのは、あの子が小さいころから好きだった味だからです。ある帰省のとき、娘が食卓を見て「お母さんの料理って、昔から変わらないよね。」と言いました。笑いながらの一言だとわかっていても、その言葉がなぜか忘れられませんでした。私の料理は古くて、あの子にはもう物足りないのかもしれない。そう思うと、いつもの皿を出すのがためらわれるようになったのです。

新しい料理をおぼえようとして

それからは、テレビやネットで見た手の込んだ料理を練習しました。あの子が帰ってきたくなるような食卓にしたかったのです。慣れない包丁の使い方に手間取りながら、私は必死でした。娘が話しかけてくれても、失敗しないように鍋から目を離せず、うまく顔を上げられませんでした。本当は、小さいころからあの子が好きだったからあげを出したい。でも、変わらないと言われた料理をまた並べる勇気が、どうしても出ませんでした。

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