
電車でくしゃみを続けた私が、降りた駅で気づいたこと
コラム
リュックから出てきた新品のマスク
4度目のくしゃみをしたあと、隣に立っていた男子高校生が、リュックのポケットから何かを取り出しました。ビニール袋に入ったままの、新品のマスクでした。
「よかったら、これ使ってください」
低くて落ち着いた声で、責めるような響きはまったくありませんでした。差し出された袋を反射的に受け取った瞬間、車内の視線が全部自分に集まっているのがわかって、隣で笑っていた友達も口をつぐみ、私と男子高校生を見比べていました。
そして...
次の駅が近づくと、私は友達に「ごめん、先に降りるね」とだけ言って、逃げるように電車を降りました。ホームのベンチに座ってマスクを袋から出したとき、あの1枚の意味がじわじわ迫ってきました。
年配の女性の注意も、周りの困った顔も、本当は全部わかっていました。ただ動画に夢中なふりをして、見ないふりを決め込んでいただけです。それをあの男子高校生は、責めもせず、注意もせず、ただ1枚のマスクで教えてくれました。
ベンチに座ったまま、私はそのマスクを着けました。次の日から、私は制服のポケットにマスクを1枚、必ず入れて家を出るようになりました。
(10代女性・高校生)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























