
親友の結婚を喜べなかった私が、「おめでとう」より先に送った本音
コラム
「そっか。よかったね」。あの日の私が言えたのは、それだけでした。祝えない理由を、私はまだ誰にも話せていませんでした。
親友の左手が視界に入った瞬間、私はカップを持ち上げて口元を隠しました。
祝えなかった報告
「プロポーズされたんだ」親友の声は弾んでいて、指輪を見せる手つきまで嬉しそうでした。私は数秒おいてから顔を上げて、「そっか。よかったね」と言うのが精一杯でした。うまく笑えていない自覚はありました。指輪だけは「似合うね」とほめました。それが嘘にならない、唯一の言葉だったからです。「式、来てくれるよね」と聞かれて、「予定、確認しておくね」と返したのは、答えを先送りにするための逃げでした。話題を仕事の愚痴に変えたのも私です。彼女のケーキが崩れたまま減っていかないことに、気づかないふりをしました。
言えなかった事情
報告の少し前、私は5年付き合った恋人と別れていました。結婚の話が出ないまま終わった関係で、親友には伝えていませんでした。別れた直後は平気なつもりでいたのに、式場や指輪の話題を目にするたび、画面を閉じる癖がついていました。心配をかけたくないと言えば聞こえはいいけれど、実際は、口に出したら自分の惨めさを認めることになる気がして、黙っていたのです。翌日、招待状の下書きの写真がメッセージで届いたときも、長い返事を打ちかけては消して、「見たよ」とだけ送りました。祝いの言葉を並べるほど、書いている自分の空っぽさが目についたからです。
次のページへ
おめでとうの代わりに























