
「数が足りなくて、渡せないんです」手伝ってくれた人だけにお土産を配った私、職場で広がった陰口
コラム
旅行鞄には、留守中の仕事を引き受けてくれた人の人数分だけ、個包装の焼き菓子を入れていました。扉越しに、自分の名前と「ケチ」という言葉が聞こえました。席へ戻ると、陰口を言っていた先輩が私の机まで来たのです。
手伝ってくれた人の人数分だけ
初めて連休をつなげて有給を取り、遠方へ旅行しました。休んでいる間の電話や事務処理は、同じチームの人にお願いしていました。出社すると、事前に仕事を引き受けてくれた人の席を順に回り、焼き菓子を手渡しました。全員へ配り終え、紙袋が空になったころ、コピー機の前で隣の課の先輩に声をかけられました。
「お土産、私にはないの?」
先輩とは、普段ほとんど話す機会がありません。冗談にも聞こえましたが、渡せる焼き菓子は残っていませんでした。
「数が足りなくて、渡せないんです」
そう答えると、先輩は「そう」とだけ返して離れていきました。
扉越しに聞こえた陰口
その場で話は終わったと思っていました。ところが数日後、同期から、私が職場でケチだと言われていると聞きました。
誰が噂しているのか分からないまま、オフィス内を歩いていると、扉の向こうから自分の名前が聞こえます。
「有給まで取って旅行したのに、配らないなんてケチだよね」
コピー機の前で話した先輩の声でした。
扉に手をかける前に、中から別の声が続きました。
「彼女のお土産なら、仕事を代わった私たちがもらっていますよ」
そう言ったのは、留守中の電話を引き受けてくれた同じチームの同僚でした。会話はそこで途切れ、私はそのまま席へ戻りました。
次のページへ
私の知らなかった手助け

























