彼女の服を採点し続けた俺、先に帰られて気づいた自分の「正しさ」

コラム

先に帰る彼女を見送ったあと、送りかけた下書きを前にして、俺は自分の「正直さ」が誰のためのものだったのかを考え始めました。

彼女はいつからか、会った直後に俺の表情をうかがうようになっていました。その理由を、俺は考えようとはしませんでした。

言わないほうが不誠実だと思っていた

俺は昔から、思ったことを口にせずにいるのが苦手でした。学生時代、周りの誰も指摘してくれないまま、ずれた格好で人前に立って恥をかいたことがあります。あれから、気づいたことを伝えるのが相手への誠実さだと信じてきました。だから彼女の服にも、会うたびに感想を口にしていました。「その服、前のほうがよかったよ」。良かれと思っての一言に彼女が小さくうなずくのを見て、ちゃんと伝わっていると思い込んでいました。

眉が先に動いた日

その日、改札の向こうから歩いてきた彼女は、見たことのないワンピースを着ていました。似合うかどうかを先に判定してしまうのは、もう癖のようなものでした。「うーん、悪くないけど、この前の白のほうが似合ってたかな」。彼女は返事の代わりに、少し先の信号へ目をやりました。俺はその横顔の意味を、深く考えないままカフェへ向かいました。

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