
「あなたと肉じゃがを作ったことは1度もないですよ」お礼メールをAIに任せた私に届いた、先輩の返信
コラム
退職する先輩へのお礼メールを、私はたった3分で送信しました。送信済みの文面にあったのは、私の記憶にない思い出でした。誰もいない事務所で自分の言葉で書いた4行に、先輩から返信が届きました。
教わったはずの書き方
入社したての頃、私のメールは誤りだらけで、先輩に赤を入れてもらいながら書き方を覚えました。それなのに、いつからか社内のお礼メールは生成AIに任せるようになっていました。要点を打ち込めば丁寧な文面が仕上がり、浮いた時間で別の仕事が進む。疑問を持ったことは一度もありませんでした。先輩から退職の挨拶メールが届いた日も、私は「感謝が伝わるエピソードを入れて」と打ち込み、出てきた文面をろくに読まないまま先輩へ送りました。
身に覚えのない思い出
数分後、先輩から返信が届きました。「気持ちはうれしいです。でも私、あなたと肉じゃがを作ったことは一度もないですよ」。慌てて送信済みのメールを開くと、そこには「先輩と一緒に作った肉じゃがの味を、今でも思い出します」と書かれていました。AIが作った、存在しない思い出でした。私は先輩への感謝を、機械が想像した嘘で語っていたのです。先輩の姿が見えるのに、席を立つ勇気が出ませんでした。
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