
家賃のいらない彼女の祖父母の部屋に、別れたあとも住めると思った俺が合鍵を返すまで
コラム
別れたあとも残れると思っていた
夕食のあと、彼女が言いました。
「同棲を解消しよう」
そのとき頭に浮かんだのは、彼女との関係ではなく、この部屋を失うことでした。
駅から近く、家賃もかかりません。長く暮らしたことで、別れたあとも自分には住み続ける権利があるように考えていました。
だから、最初に出た言葉がこれでした。
「お前が出て行くんだよな?」
彼女は、「出て行くのは、あなたのほうだよ」と答えました。
俺は生活費を半分払ってきたことを持ち出しました。しかし、それは同棲中の生活費であり、彼女の祖父母が所有する部屋へ残れる理由にはなりません。
乗っ取るつもりはなかったと言っても、自分の居場所を守るために、所有者の孫である彼女を追い出そうとしたことは変わりません。
そして...
数日後、玄関のチャイムが鳴りました。部屋へ入ってきたのは、彼女の両親と祖父母でした。
祖父から、この部屋を今後も俺へ貸す意思はないと伝えられました。続けて、彼女の父親が言いました。
「今日中に荷物をまとめてもらえるか」
俺は短く返事をし、自分の物を箱へ詰めました。家具も食器も、ほとんどは彼女や祖父母が用意したものです。自分の荷物だけを集めると、この部屋に持ち込んだ物は想像していたより少ないと分かりました。
最後に合鍵をテーブルへ置き、家族が並ぶ玄関を通って外へ出ました。
今は家賃を払って、1人で暮らしています。その日の食器をその日のうちに洗うようになりましたが、それで彼女にしたことが消えるわけではありません。
誰かが用意してくれた暮らしを、自分の権利だと思わないこと。言われないから許されていると決めつけないこと。合鍵を返したあとで、ようやく考えるようになりました。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























