目が合うたび「お出かけですか」と声をかけてくる管理人、防災訓練で私が知ったこと

コラム

パイプ椅子を畳みながら

片づけの時間、隣で椅子を畳んでいた管理人さんに、私は経路図のお礼と一緒に、毎朝の質問のことを口にしました。見られているようで気になっていました、と。返ってきたのは、予想していなかった言葉でした。「決まった言い方しか、できなくてね」。管理人さんは名簿を胸に抱えたまま続けました。「気の利いた話が続かなくて。同じ言葉に逃げていました」。図は描けても言葉が続かないのだと笑う横顔に、裏の階段のことまで見抜かれている気がして、私は畳んだ椅子を壁に立てかけてから、頭を下げました。「私も、避けてばかりでした」

そして...

翌朝、エントランスにはいつものほうきの音がありました。「お出かけですか」。私は振り返って、「いってきます」と返しました。あの経路図は、玄関の内側に貼ってあります。表から出かける理由は、それで十分でした。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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