
私が床に座り続けた3カ月。「そろそろ買い替えない?」は値段の話ではありません
コラム
何度ソファのことを口にしても、彼はそのたびに自分なりの理由を返してくれました。彼の友人に聞かれて口から出た言葉で、私は本当のことを言う機会を自分でなくします。
彼が5年暮らした部屋には、私の使わない甘い匂いが残っていました。
私は最初の数日だけ、ソファに座っていました
同棲を決めて、荷物ごとその部屋へ移りました。リビングにあるのは3人掛けのソファです。私が「これ、いつ買ったの?」と聞くと、彼は「5年前。前に付き合ってた子と選んだやつ」と答えました。私は「へえ」と返しています。その子とは1年前に別れたそうです。越してきたばかりで、使える家具を捨てさせるわけにはいきません。数日は真ん中に腰かけてみました。けれど左端に近づくほど香りは濃く、そこは彼がほとんど座らない側でした。柔軟剤だろうと考えていたものの、気になるのはいつも同じ場所です。3日目からはラグへ座り、背もたれに寄りかかる形になります。そのうち慣れるはずだったのです。
嫉妬深い女だと思われたくありませんでした
1カ月ほどして、私は「そろそろ買い替えない?」と切り出しました。返ってきたのは「まだ十分使えるだろ」です。そのあとも何度か同じ話を持ち出しました。「これ、なんの匂いか分かる?」と聞いたとき、彼は嗅ぎもせず「洗剤じゃないの」と答えます。別の日に「私、ここに座るとなんだか落ち着かないの」と伝えると、彼は回収料金を調べ、2000円の表示をこちらへ向けて「捨てるのも金がかかるだろ」と言いました。私は「そっか」と答えるしかありません。知らない香りがするというだけで、前の彼女に張り合っていると思われる気がしていました。彼には黙って無香料の布用消臭スプレーを買い、留守の間に左側へ吹きかけていました。
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「床のほうが好きなので」と、私は答えました






















