
「本当に1人で住んでるの?」生活感のない部屋を問い詰めた私に、彼は押し入れを開けました
コラム
約束より早く着いた日、彼の部屋の歯ブラシ立てには1本しか立っていませんでした。押し入れの戸が引かれたとき、私が思い描いていた誰かは、そこにいませんでした。それでも私は、天井の近くまで積み上げられたものから、しばらく目を離せずにいました。
部屋はいつも、使い始めたばかりの顔
彼と付き合って1年、月に何度か彼のワンルームへ通っていました。着いたと連絡を入れると、決まって「あと少しだけ待って」と返ってきます。階段の下で過ごす数分は、そういうものだと受け入れていました。
上がってみれば、部屋はいつもきれいでした。壁にはカレンダーも写真もありません。冷蔵庫の中には水と調味料が1本あるだけです。ゴミ箱には袋すらかかっていません。物を持たない人なのだと、私は勝手に納得していました。
早く着いた日に見たのは、知らない部屋
乗り換えがうまくいったその日は、連絡を入れないまま階段を上がりました。呼び鈴を押すと、彼はドアを半分だけ開けました。
畳の上には座布団が1枚。座卓は畳んだまま壁に寄せてあり、歯ブラシ立ての中身は先ほどの1本きりでした。「先に出しておきたかっただけなんだ」と彼は言いました。
浮かんだのは、彼が今まさに何かを片づけ終えたところなのだという想像です。ここが彼の帰る場所ではなく、私に会うためだけに借りた部屋なのだとしたら。座布団が1枚しかない畳は、その想像とよく合いました。
「本当に1人で住んでるの?」
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押し入れの箱には、消された住所が並んでいた
























