「本当に1人で住んでるの?」生活感のない部屋を問い詰めた私に、彼は押し入れを開けました

コラム

押し入れの箱には、消された住所が並んでいた

彼は答えないまま、押し入れの戸を横に引きました。天井の近くまで、封をしたままの段ボールが積んであります。留めたテープはどれも茶色く焼けていました。手前の箱の側面には、線を引いて消された住所が3つ並び、その下に今の住所が書き足してあります。仕事の都合で何度も移ってきたのだと、私はそのとき初めて聞きました。

「開けたら、次に出るときに困るから」

「次に出るときって、いつ?」

「まだ決まってない」

思い描いていた誰かは、どこにもいませんでした。それでも、この部屋に住んでいる気がしないという感じだけは、外れていなかったようです。

そして...

「この箱、開けてみてもいい?」と聞くと、彼はいちばん上の箱を下ろしてテープをはがしました。新聞紙にくるまれて出てきたのは、椀が2つ。一度も使っていないものだと言われました。今その2つは、彼の部屋の流しの水切りに伏せてあります。私が着くころに合わせて、座布団も2枚とも先に出ているようになりました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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