カーテンを閉めきった家の私が、謝りに来た人との玄関先で譲らなかったこと

コラム

扉の内側で聞いた声を、私はずっと覚えていました。だから呼び鈴が鳴ったとき、今度は扉を大きく開けたのです。それでも、言うと決めていたことは変えませんでした。

回覧板の板がポストに当たる音がして、そのまま足音が遠ざかっていきました。

この家のカーテンは、預かった子のために閉めています

私は在宅の仕事をしながら、行き場のない猫を一時的に預かるボランティアをしています。来たばかりの子は物音に怯えて、部屋の隅から出てきません。道路に面した窓の外を人や車が通るたび、カーテン越しでも身を硬くする子がいます。だから道路側の窓は開けず、外の人影や車が刺激にならないよう、カーテンも閉めたままにしています。

その事情を、近所に話したことはありませんでした。付き合いを広げる気がもともとなかったからです。挨拶だけ交わして、あとは踏み込まない。それがこの家での暮らし方でした。

ゴミを出そうとして、扉を閉めました

袋を持って玄関を開けたとき、ゴミ捨て場のほうから自分の家の話が聞こえてきました。

「あの家、昼間からカーテン閉めっぱなしで怪しい」

声の主は分かりました。続けて、向かいの家の女性の相づちも耳に入りました。

「うちからも、開いているところを見たことがないです」

私は袋を置いて扉を閉めました。輪に入って事情を話す気は起きませんでした。あの人たちには話しても分からない、と線を引いたのです。ただ、扉の内側で長いこと立っていた自分がいたのも本当です。

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