
娘を追いかけて駅へ向かった母→塩豆大福を手に、改札の向こうの背中を呼び止められなかった
コラム
売店の棚の前で
玄関のドアが閉まってからも、食卓の片付けは手につきませんでした。気づけば椅子にかけていた緑のカーディガンを羽織り、車の鍵をつかんでいました。
駅に着いても、待合室をのぞく勇気は出ません。何と言えばいいのか。帰ってこなくていいと言った口で、また来てねとは言えない気がしたのです。
駅の売店で塩豆大福を買い、振り返ると、改札の向こうに、スーツケースを持って階段を上っていく娘の背中が見えました。今なら呼び止められる距離です。それでも、拒まれるのが怖くて口を開くのが遅れました。名前を呼ぶ前に、娘の姿は階段の上へ消えていきました。
そして...
家に戻り、娘とのチャットを開き、何度も打ち直した文を送りました。
「さっきは言い方が悪かった。無理して帰ってこなくていいって言いたかったの」
送信してから、しばらく画面を眺めていました。既読は、まだつかないままでした。
(50代女性・パート)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)































