
お隣に張り紙をした私が、脚立の音を聞いてフェンスまで走った理由
コラム
フェンス越しに言えなかったこと
階段を駆け下り、エプロンを着けたままサンダルをつっかけて、フェンスの前まで走っていたのです。
「待って!その枝、切らないで!」
脚立の上から、お隣さんがこちらを見下ろしていました。
「張り紙、見ました。すぐに切りますので」
紙1枚で、この人にここまで気を遣わせてしまった。巣のことより先に、フェンス越しに頭を下げていました。
「ごめんなさい、張り紙のことも、ちゃんと話させてください」
「片づけが済んだら、うちに寄ってもらえますか」
「分かりました。脚立をしまったら伺います」
しばらくして来てくれたお隣さんを、寝室へ案内しました。窓から枝の先を指さすと、お隣さんは少し身を乗り出し、それからこちらを振り返りました。
「張り紙より先に、教えてほしかったです」
笑いながらの言葉に、深く頭を下げました。
そして...
巣が空になったのは、それから10日ほどあとのことです。お隣さんは改めて脚立を立て、あの枝を付け根から切りました。フェンスのこちら側で、落ちてくる枝を受け取ったのは私です。
お隣さんとは今、会えば立ち話をする間柄です。それでも、あの張り紙の分まで謝れたのかどうか、答えは出ないままでした。
(60代女性・パート)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)





























