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    「私は先輩じゃないので」と返した私が、先輩の失敗の記録を読み始めた理由

    ライフスタイル

    先輩の古い手帳には、私と同じ失敗が同じ順番で並んでいました。「新人の頃の私にそっくり」という口癖を、私は比べるための言葉だと思って聞いていました。記録を読んだあとも、その言い方が嫌だったことまで消えたわけではありません。

    花束を抱えた先輩がエレベーターに乗ったあと、私は隣の席に移りました。机の引き出しは上から順に空になっていました。一番下だけを残して。

    間違えるたびに聞いた口癖

    入社した春、教育係についたのがその先輩でした。宛名に「様」と「御中」を両方書いた封筒を見て、笑いもせずに言ったのが「新人の頃の私にそっくり」。電話の取り次ぎを間違えても、同じ言葉でした。間違えたのは私なのに、話の主語はいつも先輩です。半年もすると、聞こえるたびに封筒を裏返す癖がついていました。

    「私は先輩じゃないので」

    見積書の桁を1つ間違え、先方から電話が入った日です。差し戻された見積書を見て、先輩が言いました。「新人の頃の私にそっくり」。プリントアウトを机に伏せたまま、私は言いました。「私は先輩じゃないので」。思ったより大きな声でした。先輩は見積書に目を落としたまま、少し置いて答えます。「そうね。ごめんなさい」。その日を境に、口癖は消えました。残りの2週間、交わしたのは引き継ぎの確認だけです。

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