
「おはようございます」と送り始めた俺が、彼女に言えなかった祖母との最後の約束
コラム
祖母が亡くなって2週間。毎朝、彼女に送る「おはよう」の一言を、俺は「おはようございます」と打ち直してから送信していました。その理由を、どうしても彼女に話すことができませんでした。
祖母が残した一冊のノート
祖母が亡くなる少し前、入院先で一冊の古いノートを渡されました。中には、若かりし頃の祖父が祖母に宛てて書いた手紙が挟まれていました。仕事で離れて暮らしていた数年間、毎朝欠かさず書いていた手紙だそうです。どれもすべて、丁寧な言葉遣いで綴られていました。
「大切な人には、言葉の一つひとつを丁寧に選びなさい」。祖母が何度も繰り返した言葉です。俺は頷くだけで、その意味を深く考えたことはありませんでした。病室のベッドの上で、祖母は穏やかに笑っていました。
「おはようございます」と打った朝
葬儀を終えた翌週の月曜日、いつものように「おはよう」と打ちかけて、指が止まりました。祖母の声が耳の奥でよみがえって、気づいたら「おはようございます」と打っていたのです。
送信ボタンを押した瞬間、自分でも驚きました。彼女から返ってきたのは、笑った顔の絵文字ひとつ。戸惑わせてしまったとわかりました。それでも、普段の「おはよう」に戻す気にはなれません。祖母の言葉を守ることが、今の自分にできる唯一の弔いのような気がしたのです。
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「なんとなく」としか言えなかった理由


























