
母に絶対見られたくなかった段ボール。一人暮らしの新居で、俺はその箱を開けられずにいる
コラム
大学進学で一人暮らしを始めた部屋の隅に、一つだけ開けられない段ボールがあります。母に手伝いを断ったのは、この箱の中身を誰よりも見られたくなかったからです。
素直になれなかった2年間
中学までは、母とそれなりに話せていた気がします。高2のある日を境に、急に母の近さが耐えられなくなりました。「おかえり」に「ただいま」と返すのが、どういうわけか恥ずかしい。夕食の席で母の顔を見ながらご飯を食べるのが気まずい。
自分でもよくわかりません。思春期というものなのでしょう。ただ、素っ気なくすることでしか距離の取り方が見つからなかった。朝のお弁当を残して出ていく自分を、情けないと思った日もあります。でもその頃にはもう、素直な声の出し方を忘れていました。
捨てられなかった缶
引っ越し準備でクローゼットの奥から、小学生の頃のお菓子の缶が出てきました。ふたを開けると、母からの誕生日カードが10枚ほど、運動会のお弁当に入っていた応援メモ、幼稚園の連絡帳まで収まっていたのです。
いつから貯めていたのか、自分でも思い出せません。ただ、どれも捨てられず、中学の頃に缶にまとめて隠したのは覚えています。新居に持っていこうと決めました。一つの段ボールの一番下に入れて、他の物で上から隠す。誰にも見せない箱として。こんなものを大事にしている自分が、とにかく恥ずかしかったのです。
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叫ぶように出た声























