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呼び捨てを名字に戻したのは、彼女を守るためだった。でも本当は、僕が逃げただけかもしれない

コラム

「下の名前で呼んでるなんて、怪しい」その一言を聞いてしまってから、僕は彼女の名前を呼ぶのが怖くなりました。距離を置いたのは優しさだと、自分に言い聞かせていただけなのかもしれません。

自然と呼んでいた名前

彼女は同じ部署の後輩で、仕事を覚えるのも早く、一緒にいて気の楽な相手でした。外回りに出るようになってから、気づけば僕は彼女を下の名前で、呼び捨てで呼ぶようになっていました。

深い意味があったわけではありません。ただ、名字で「さん」とつけて呼ぶより、そのほうが自然に感じられたのです。今思えば、その時点で僕は、彼女のことを特別に思い始めていたのだと思います。

聞いてしまった噂

そんなある日、給湯室の前で同僚の声を耳にしました。

「下の名前で呼んでるなんて、怪しい」

冗談まじりの軽い口調でしたが、その言葉は妙に引っかかりました。噂が広がれば、困るのは僕より彼女のほうです。まだ部署に慣れたばかりの彼女に、おかしな詮索をされてほしくない。そう考えた僕は、呼び方を元に戻そうと決めました。

ただ、正直に言えば、それだけではありませんでした。自分の気持ちが呼び方からにじみ出てしまうのが、僕は怖かったのだと思います。

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