
彼のボイスメモに録音されていたのは、駅の発車音だけ。返信のない間に膨らんだ私の想像
コラム
メッセージアプリの通知が鳴り、彼の名前の横にボイスメモのアイコンが並んでいました。再生してみると、聞こえてきたのは電車の発車を知らせるメロディと、ホームのアナウンスとざわめきだけ。彼の声は、最後まで一度も入っていませんでした。
声のないボイスメモ
最近の彼は、メッセージの返事が少しずつ短くなっていました。会っても考えごとをしているような表情を見せることが増え、私はその理由を聞けないままでいたのです。そんなとき届いたのが、あのボイスメモでした。
再生ボタンを押すと、発車を知らせるメロディが流れ、ホームのアナウンスとざわめきが続きました。三十秒ほど経っても、彼の声は聞こえてきません。間違えて送ったのだろうかと思いましたが、それにしては長すぎる気がしました。何度か再生し直しても、入っているのは同じ音だけ。彼が今どこにいて、何をしているのか、私には何ひとつわかりませんでした。
既読のまま止まった会話
すぐに「どうしたの?」とメッセージを送りました。既読はすぐにつきました。それなのに、返信は来ません。
何かあったのかもしれない。あるいは、私に言えないことを抱えているのかもしれない。一度悪い想像が始まると、止められませんでした。誰かと一緒にいて送る相手を間違えたのか、それとも別れを切り出すための前置きなのか。考えるほどに、あの発車音が頭の中で繰り返し鳴り続けます。返事を待つ間、私は家の中を意味もなく歩き回っていました。
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彼が抱えていたもの
























