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彼のボイスメモに録音されていたのは、駅の発車音だけ。返信のない間に膨らんだ私の想像

コラム

彼が抱えていたもの

しばらくして、彼から電話がかかってきました。開口一番、彼は「ごめん」と言いました。声には、いつもの落ち着きがありませんでした。

彼が話してくれたのは、私が想像していたどれとも違う内容でした。遠い土地の支社へ移ってほしいという話が進んでいて、それを何週間も一人で抱えていたというのです。私にどう切り出せばいいのかわからず、ホームで録音を始めたものの、最後まで言い出せなかったのだと、彼は打ち明けました。「どうして言ってくれなかったの」。気づけば、私はそう口にしていました。ただ寂しかったのです。

そして...

浮気でも、別れ話でもなかった。そのことに、私はほっとしました。それでも、二人のこれからに関わる話を一人で決めようとしていたことが、少しだけ寂しく感じられたのも本当です。「心配させたくなかった」という彼の気持ちは、たぶん嘘ではないのだと思います。

でも、それなら次は、迷っている途中でもいいから声にしてほしい。私もきっと、待っているだけにはしないから。声にならなかったあのメロディは、彼が立ち止まって考えていた場所の音だったのだと、今はそう思えます。あの発車音は、もう怖くありません。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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