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「君のことは、覚えてるから」と言った僕が、彼女との録音だけ消していた理由

コラム

彼女との録音だけ、僕は消しました。取り繕う自分が嫌だったからです。けれど道具を手放した僕は、いちばん大切な頼みごとを忘れていたのです。

通話を終えると、僕は決まって録音アプリを開きます。相手の頼みごとや約束を、自分の声で短く残しておくのです。そうしないと、すぐに忘れてしまうから。几帳面なのではなく、忘れるのが怖いだけでした。

誰かをがっかりさせるのが、ずっと怖かった

昔から、人の話をうまく覚えていられません。約束を取りこぼして相手を落ち込ませるたびに、自分が嫌になりました。録音アプリは、その不安をなだめるための道具です。妹の相談も同僚の愚痴も、聞き返せるように残しておけば、次に会ったとき正しく応えられます。誰かをがっかりさせずに済む、僕なりのやり方でした。

彼女との録音を消した

付き合い始めたころは、彼女との会話も残していました。けれどある日、自分の録音を聞き返していることに気づきました。彼女の言葉を巻き戻し、次にどう返すかを組み立てている。それではまるで、宿題の答え合わせです。せめてこの人の前でだけは、取り繕わずにいたい。そう思って、僕は彼女の録音をすべて消しました。

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