
予約が取れないまま迎えた結婚5年目の当日、俺は妻に何も切り出せなかった
コラム
何ヶ月も前から書き溜めた店の候補は、迷い続けるうちに予約枠が埋まっていきました。
何かを言おうとするたび、俺は妻の目を見られないまま口を閉じていました。予約フォームのエラー画面を見つめたのは、記念日の前日、これで10軒目のことでした。
目星をつけた店から順に埋まっていった
結婚から丸5年、俺は数ヶ月前から気になる店をノートに書き溜めていました。妻の好きな和食、2人で通ったフレンチ、結婚式のあとで訪ねたホテル。ただ「ここでいいのか」と迷ううちに、目星をつけた店から順に予約枠が埋まっていきます。
ノートの端には「レストランのメッセージプレートに書いてもらう一言」という欄も用意していました。「妻へ、5年間ありがとう」と書き出しては、これじゃ照れ臭いと消し、書き直してはまた消していました。
もう少し早く決めていればよかったんだよな。目を覚まし、ダメ元で開いた最後の予約画面にも、満席の表示だけが残っていました。
妻の顔を見られなかった食事
2人で出かけた買い物の帰り道、妻が「どこか外に食べに行こうか」と口にした時、俺の頭には満席の文字が載る予約画面が浮かびました。ここで頷いたら、行き先を決められなかった自分を認めることになります。
俺は「疲れてるからいいかな」と首を振りました。家に着いてから、俺は台所に立って「今日は出前でいい?」と聞くのがやっとでした。妻は「うん、いいよ」と短く返しました。届いたカレーを口に運びながら、俺は妻の顔をまっすぐ見られませんでした。テレビの音量を上げて、言い訳の声を自分の中でかき消していました。
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妻が引き出しに近づいた気配


























