「そろそろ行くね」と早く帰る友人を、マンションの下のベンチで見つけた話

コラム

おかわりを断っていた理由

次に友人が来た日、保冷バッグを返してから聞きました。

「うちに来るの、しんどい?」

友人は湯のみに指をかけたまま、しばらく答えませんでした。それから、戸棚のほうを見て言いました。

「おかわりまで頼んだら、また新しいの開けさせちゃうから」

初めてこの部屋に呼んだ日のことでした。私は戸棚から袋を出して封を切り、「これ、おいしいから飲んでみて」と淹れたのです。あの音を、友人は自分のせいだと受け取っていたのでした。

私は湯のみを置いて、友人の顔を見ました。

「あのほうじ茶、私が1人のときも飲んでるやつだよ」

言ってから、皿のお菓子が残ったままだった理由も分かりました。手を伸ばせば、その分だけ長居することになると考えていたのだと思います。

そして...

今は、友人が来る前にほうじ茶を淹れて、ポットごとテーブルへ出しておきます。封を切る音がしなくなってから、彼女は湯のみが空になっても座ったままです。この前は、保冷バッグの中のプリンが溶けかけていました。溶ける前に食べようと言い合いながら、私たちはまだ話の途中でした。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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